万年筆のペン先調整は、系統的にはまとめられておらず、それぞれ、作業される方ごとに「型」のようなものがあります。
道具もそれぞれ、フォームもそれぞれです。
川口は少ない道具で、指先の感覚を頼りに、ペン先の状態や素材の弾力を判断し、個体差や万年筆全体のバランスを考慮して作業を進めていきます。
川口が目指すのは、万年筆個々の本来の筆記感です。
サンドペーパー上の滑り、ざらつきなどを指先の感覚で捉え、紙との接触によって生じる毛細管現象の強弱を調整していきます。
万年筆自体の構造と特徴を熟知し、万年筆個々の個性を活かしていきます。
海外メーカーの、外国人の大きい手を前提にして設計された万年筆も、日本人の手にも馴染むように、ペン先を調整していきます。
軸の太細、滑りやすさ、重さなどによって、立て気味に持たれやすかったり、寝かせ気味に持たれやすかったり、筆圧がかかりやすかったり、かかりにくかったりしますので、軸の素材や重量のバランスなども見ながらペン先調整を行います。
自らの感覚に頼る調整方法のため、自身の調整の仕方を体系的にまとめられなかったことが心残りではありますが、今はただ、目の前にくる万年筆を調整し、世に残していくことに注力しています。
力を入れる作業のスピードは、年齢とともに衰えましたが、指先の感覚自体に衰えを感じることはありません。
長年の作業によって固まった型とフォーム、指先の感覚を軸に今後も可能な限り、万年筆のペン先調整をしていきます。
少しずつですが、可能な限り、調整した万年筆を残していきます。
ご興味ありましたら是非ご覧ください。